SIer(エスアイヤー)とは!?どこよりもわかりやすく解説!
公開日 : 2020年08月14日 | [更新日] 2023年05月01日
ネットでは良くない噂も多いSIerですが、今でも多くのITエンジニアが働いており、日本の企業活動を支えている重要なIT産業です。
そして、SIerは未経験のエンジニアの採用数が多く、中には将来のスキルアップの実現に適した企業もあります。
これからITエンジニアを目指す方が、SIerのことをよく知らないで避けていたのでは、もったいない。そこで次から、SIerについて詳しく解説します。
目次
SIerの読み方とは
日本では、企業や官庁で使われている情報システムの企画、構築、運用を、専門のIT企業に委託するのが一般的です。
そして、そのようなIT企業を、システムインテグレーターまたはその英語を省略してSIerと表現します。
なお、アメリカは、日本と雇用環境が違うこともあり、情報システムの企画、構築、運用を専任に雇ったエンジニアにやらせるのが一般的です。
そのため、システムインテグレーターは日本ほど多くはなりません。そのため外国で、システムインテグレーターと言っても通じないかもしれません。
さらに、それを省略したSIerは、日本以外では通じないと考えてください。
SIerの正しい読み方は「エスアイヤー」
先ほど説明したように、SIerは、システムインテグレーター(Systems Integrator)の英語を省略した表現です。
細かく解説すると、Systemの「S」と、Integratorの「I」に、「~する人」という接尾辞「-er」を付けた和製英語です。
そのため、読み方もSI「エスアイ」+er「イヤー」で「エスアイヤー」と読みます。
先ほど説明したように、アメリカなどの外国では、システムインテグレーターという呼び名が一般的でありません。
もし、英語でSIerを説明するなら、ITサービス会社(information technology services company)と読んだ方が分かりやすいでしょう。
SIerとは何か?わかりやすく説明!
和製英語のSIerですが、その基になったシステムインテグレーターと言わても、すぐにこんな仕事とイメージできる方は少ないかもしれません。
次からSIerとは何かについて、詳しく解説します。
SIerを一言で言うと
SIerを一言で言うと、情報システムを作りたい、または使っている企業や官公庁の代わりに、情報システムの企画、構築、運用を請け負うIT企業です。
企画から請け負うので、オーダーメイドでゼロから仕様を作り、開発に必要な多くのエンジニアを集めて期限どおりに構築します。
さらに、専門家を派遣して保守や運用を担当するのもSIerの仕事です。
ただし、情報システムの構築や改修は社外秘の情報を扱うことから、その会社に常駐して作業することも多く、さらに納期に近い時期は残業が多いなどブラックな環境と言われることもあります。
また、SIerのエンジニアの多くが常駐先で勤務しており、派遣社員と区別のが曖昧になるという問題もあります。
また下請けとしてエンジニアが大量に集められ、そうやって集められたエンジニアは、多重請負のせいで給料が低く抑えられているといった課題も抱えています。
SIerはどういう仕事がある?
冒頭で説明したように、SIerは、企業や官庁で使われている情報システムの企画、構築、運用を担当します。
この中で最も重要な仕事が、情報システムの企画です。これができるのが、SIerの特徴とも言えるでしょう。
ただし、情報システムの企画を担当できるエンジニアの数は少なく、高い給料をもらえる仕事です。
また、企業で使われている情報システムは、かなり大規模なソフトウェアなので、構築には大勢のプログラマーが参加します。
しかし大手のSIerといえども、多くのプログラマーを雇っている訳ではありません。
そのため下請けSIerと契約し、そのSIer所属のプログラマーや、さらにその下の下請けSierが担当します。
しかし、情報システムが完成したとしても、運用しているうちに、法律改正や仕事のやり方の変化などで情報システムを改修する必要が発生するでしょう。
そのような場合にも、企画と構築を担当したSIerが対応します。
SIerはシステムの種類によって分類される
日本のSIerは元々、大型コンピューターを作っていたメーカーが、顧客の要望に応えて自社の大型コンピュータで動作するソフトウェアを開発して納品したのがスタートです。
そのため大手SIerの多くは、以前大型コンピュータを製造・販売していた会社でした。
そのようなSIerは、メーカー系SIerと呼ばれ、情報システムといっしょにサーバーや社員が使うパソコンまで一括で納入することもよくあります。
また、大企業はかつて大型コンピューターを管理していた情報システム部門を子会社に分離し、グループ内の情報システムの開発や運用を担当させました。
そしてそういった子会社が由来のSIerを、ユーザー系SIerと呼びます。
さらに、メーカー系のSIerの構築の仕事を下請けするSIerがたくさんありますが、そういったSIerは全て別会社です。
そして、このようなSierは、独立系SIerと呼ばれます。なお、独立系SIerの中には、情報システムの企画もできる技術力の高い会社もあります。
この他に、ITコンサルタントに特化したコンサル系SIerや、外国で開発された情報システムをカスタマイズして販売する外資系SIerなどもあります。
SIerの分類
・ユーザー系SIer
・独立系SIer
・コンサル系SIer
・外資系SIer
SIerは会社によって可能範囲が異なる
先ほどSIerの分類を解説しましたが、分類毎にやれる範囲がある程度決まっています。
例えばメーカー系SIerは、基本的にどのような情報システムでも構築できますが、サーバーはそのメーカー製品に限られたり、実績のある言語や開発手法に限られるので、必ずしも最新技術を習得できる訳ではありません。
またユーザー系は、グループ内で使っている既存の情報システムを改修したり、その運用を担当することが多く、新規に開発する案件は多くありません。
その代わり、同じ職場に長く勤められます。
一方独立系SIerは、下請けしかできない企業と、上流の仕事もできる企業では、可能な仕事の範囲が大きく違います。
具体的には、下請けでは製造工程しか担当できないのに対し、上流の仕事ができれば、要件定義や設計といったシステムエンジニアが担当する分野の仕事を担当することも可能です。
さらに上流工程を担当できるSIerでは、条件さえ合えば新しい技術を導入することも可能です。
SESとSIerの違いとは
IT業界には、SIerと似た業種としてSESがあります。
同じように企業などの情報システムを扱う業種で、所属するエンジニアの働き方は同じように見えますが、その役割は全く違います。
次から、SESについてご紹介します。
SESとは
SESとは、System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略で、情報システムに関してエンジニアが担当する業務を代行する、委託契約の一種です。
そして、契約が結ばれるとSESに所属するエンジニアが契約した企業に常駐して、情報システムの改修や保守、運用などを担当します。
なお、このようにエンジニアが常駐する契約は、今回解説しているSIerとSESの他、エンジニア派遣もあります。
これらの違いは、業務の責任と命令権者の違いに着目すると理解しやすいでしょう。
・SESのエンジニアは、業務の責任は常駐先の会社にありますが、命令権者はSESの管理者です。
・エンジニア派遣は、業務の責任は常駐先の会社にあり、命令権者も常駐先の会社の管理者です。
SESとSIerの違いは契約形態
SESとSIerの違いを一言で言えば、SIerには製造物責任が発生するのに対し、SESでは発生しない点です。
これは先ほど説明した業務の責任による違いで、それぞれの契約形態に依存します。
具体的には、SIerとの契約は、オーダーメイドで情報システムの製造を請け負う請負契約です。
そのため納品後に不具合があれば、製造物責任が発生し、これを修正する義務を負います。
しかしSESのと契約は、ある期間だけ業務を委託する準委任契約です。
この契約は期間が満了した後に不具合が発覚した場合、その責任は発生しません。
ただし、下請けのSIerの中には、請負か準委任契約かが解り難いケースもあります。
SIerのエンジニアとして働くなら、自分がどのような契約で常駐しているかにも注意を払ってください。
SIerの業界構造とは
SIerはたとえ大手だとしても、1社だけで情報システムの開発を完結できる訳ではありません。
要件定義や設計はできますが、構築やテストは下請けのSIerを使うのが一般的です。
しかもその下請けSIerでもプログラマーが足りずに、さらに別のSIerに契約する、といったことが繰り返されます。
これは多重下請けと言い、SIerの問題点として有名です。
次から、こうしたSIerの業界構造について解説します。
大手SIerが上流で案件を獲得
日本のSIerは、バブルの時期に大型コンピュータを製造販売していた大手電機メーカーが、大規模な情報システムの開発を手掛けるようになったことが契機となり、新しいい産業として発展してきました。
そして大手電機メーカーからSIerになった会社は、今でも大手SIerであり、その実績や営業力から元受けとしての役目を担当します。
なお、元受けの大手SIerでは、所属するシステムエンジニアに要件定義や設計といった上流工程を担当させます。
しかし、大手SIerといえどもエンジニアは限られています。
そのため、構築やテストなどの下流工程は下請けのSIerを利用します。
大手Sierが要件ごとに切り分けて下流に発注する
先ほど紹介したように、大手SIerが上流工程を担当し、下請けのSIerが下流工程を担当します。
しかも、下請けのSIerは、1社とは限りません。
大手SIerが要件ごとに切り分けて、それを複数の下請けのSIerに発注します。
なお、それを受けた下請けのSIerでは、要件毎の細かい仕様を設計し、それに基づいてプログラムを構築します。
ただし、情報システムの構築には多くのプログラマーが動員されますが、その人数を1社でそろえられるSIerはありません。
人員の足りない下請けのSIerは、さらに下請けのSIerに発注します。
そうやって、2次受け、3次受けどころか、5次受け、6次受けのSierまで構築に参加することから、多重下請けと呼ばれます。
システムの種類によって会社が分かれている
元受けになる大手SIerの多くは大手電機メーカーであり、サーバーやパソコンなどの情報機器の製造・販売もやっています。
また、会社の信頼度や営業力もあるので、情報システムの改修などでは、以前契約したのと同じ大手SIerと契約するが普通です。
そのため、大手SIerの顧客となる大手企業や官公庁は、ある程度固定されています。
また、そのような大手SIerの1次下請けに入る中堅SIerも、ある程度決まっており、さらにその下もほぼ決まっています。
このように大手SIerの顧客の下には、その大手SIerを頂点とした多重下請けのピラミッドができていると言えます。
得意な領域でも会社が分かれている
先ほど説明したように、長く使われている企業の情報システムほど、そのサポートができる大手SIerの系列が決まっています。
しかし新興企業向けの情報システムや、大規模なWebシステムの開発では、大手SIerが元受けで受注できる訳ではあません。
大手SIerにはできない、最新のIT技術を取り入れた情報システムの構築を手掛ける独立系のSIerがあったり、Web系のシステム開発が得意はSIerもあります。
また、グループ内にSIerを抱えている大手企業グループも多く、系列内の情報システムの保守や運営を、そのグループ内のSIerが担当します。
このように、メーカー系の大手SIerが全ての仕事を独占しているのはなく、それぞれ得意な分野のSIerがあり、業界で仕事を分担しています。
代表的な大手SIer企業とは
次から、多くの企業の情報システムの開発や運用を担当している、代表的な大手SIerを紹介します。
富士通
富士通は、日本を代表する大手電機メーカーの1社であり、メーカー系の大手SIerとしても有名です。
なお、富士通は、元は当時の電電公社に電話機を納入する会社でしたが、大型コンピュータFACOMシリーズのヒットにより、情報システムの構築を請け負うことで、今では日本を代表するSIerとなりました。
富士通の特徴は、情報システムを構成するハードとソフトの両方を提供できる総合力です。
まずパソコンメーカーとしても大手の富士通は、サーバーを含むハードウェアを自社製品で揃えられます。
また大型コンピュータ向けシステムから続く、業務系システムの開発力も高く、大手企業や官公庁など多くの顧客を抱えています。
アクセンチュア
アクセンチュアは、世界最大の経営コンサルティングファームであり、また、世界各国でシステムの設計、開発、運用等を手がけるITサービス企業です。
そして、日本では1962年から営業しており、実績も技術もある外資系のSIerとして知られています。
外資系SIerであるアクセンチュアの特徴は、SAPやOracleなど、アメリカやヨーロッパで実績のあるパッケージを、日本向けにカスタマイズして販売している点です。
日立
日立も富士通と同じく日本を代表する大手電機メーカーの1社であり、しかもメーカー系を代表する大手SIerの1社です。
元々日立は、鉱山向けのモーターなどを製造する会社でしたが、大型コンピュータHITACシリーズのヒットにより、今では大手SIerとして多くの企業の情報システム構築に関わっています。
日立の特徴は、富士通と同じく、サーバー機器を含むハードとソフトの両方を提供できる総合力です。
そして、大型コンピュータ向けシステムから続く業務系システムの開発力も高さから、日立のグループ会社を含む多くの顧客を抱えています
独立系SIerとは
元々大型コンピュータを製造・販売していたメーカーだったメーカー系SIerでも、大手企業の情報システム部門が独立したユーザー系SIerでもない会社はたくさんあり、独立系SIerに分類されます。
そして、このような独立系SIerの多くは、メーカー系SIerやユーザー系SIerの下請けの仕事をしており、IT業界の多重下請けを支えています。
そのため、給料が安く、さらにプロジェクトによっては残業続きになるなど、ブラックな環境になりやすいと言えます。
とはいえ、独立系SIerの中には、元請けになれる技術を持つ会社もあり、そのような独立系SIerに就職できれば上流工程を経験できたり、新しい技術が使えるプロジェクトに関わるチャンスもあります。
メーカー系SIerとは
メーカー系SIerとは、先ほど代表的な大手SIer企業として説明した富士通と日立などで、先ほど説明したように、ハードとソフトの両方を提供できる総合力がメーカー系SIerの特徴です。
なお、メーカー系SIerは、依頼されればどのような情報システムでも開発できる技術を持っていますが、サーバーやOS、ミドルウェアなどは、自社で扱う製品に限定されます。
また、給料が高いものの上流工程しか経験できず、エンジニアとしてのキャリアよりも、コンサルタントを目指す方に向いています。
ユーザー系SIerとは
バブル崩壊後、多くの企業が経費削減のために情報システム部門を子会社化し、グループ企業の情報システムの保守と運用を担当させるケースが多くなりました。
このような会社を、ユーザー系SIerと呼びます。
ユーザー系SIerは、親会社の仕事を継続して請けられるので、仕事は安定しています。
しかし、既存のシステムの保守や運用ばかりのため、新しい技術に触れる機会は多くありません。
そのため、エンジニアとしてのキャリアを考えている方にとっては、避けた方が良いでしょう。
なお、ユーザー系SIerの方には元の企業による特徴があります。
次から、代表的なユーザーSIerの特徴について紹介します。
銀行系
銀行系のSIerは、親会社の銀行の顧客情報や口座情報など、厳格に管理されているデータを扱う情報システムの保守や運用を担当します。
そのため、セキュリティ管理が厳しい職場で作業することになり、そこで働くエンジニアは仕事中にいろいろな制限を受けます。
また、情報システムを運用するためには、親会社の複雑な銀行業務に関する知識も必要とされます。
通信系
日本電信電話(NTT)は、固定電話の他にインターネット回線を持つ大手通信会社ですが、多くのグループ企業があり、それらで多くの情報システムが使われています。
そして、そういったNTTグループ内の情報システムの保守や運用を担当する会社は、SIerとしても大手で、グループ外の情報システム構築も請け負っています。
他にも、スマートフォン向けの通信サービスを提供するAUやソフトバンクなどでも、グループ内にユーザー系SIerがあり、さらに、大手テレビ局の系列会社にもユーザー系SIerも通信系として分類されます。
生保系
銀行系と同じく、生命保険会社を親会社とするユーザー系SIerも顧客の個人情報や口座情報を扱うため、グループ内のユーザー系SIerが情報システムの保守や運用を担当します。
また銀行系と同じように、生保系のSIerで働くエンジニアは、生命保険の業務に関する知識が求められます。
商社系
大手企業グループに所属するユーザー系SIerの多くが、グループ内の企業の情報システムの保守や運用を担当するのに対し、商社系のSIerは、外国で開発された業務システムを国内向けにカスタマイズして販売するのが仕事です。
そのため、海外にある本社と同じシステムを導入する外資系企業や、外国製のシステムを必要とする企業への導入サポート、保守などを担当します。
Web系SIerとは
近年、クラウド上のシステムを活用する企業が増えており、そのような企業の中にはクラウド上に自社の情報システムの一部を移す会社も出てきました。
しかし、自社のエンジニアだけでクラウド上にシステムを作れる会社はまだ少数です。
そこで注目されているのが、クラウド向けのシステム構築を請け負うシステムインテグレーターです。
例えば、クラウド大手のアマゾンウェブサービス(AWS)ではパートナー制度を提供しており、その認定を受けたシステムインテグレーターが何社もあります。
なお、日本では、まだ企業向けのクラウドのサービスの普及が進んでいませんが、利用拡大が見込まれています。
そのため、今後はクラウドを活用できるSIerが求められると予想されます。
SIerのプロジェクトの種類とは
SIerが手掛けるプロジェクトにより、そこで働くエンジニアに求められるスキルが異なります。
次から、SIerの代表的なプロジェクトの特徴について解説します。
官公庁のシステム開発
官公庁で使われている情報システムの特徴は、個々の業務固有の手続きを手厚くサポートしており、また長い期間に渡って機能追加されているため、非常に複雑で巨大なシステムです。
そのため、保守や運用に手間がかかることから、当初開発に関わった大手SIerによって管理されています。
ただし、これは他の大企業で使われている情報システム全般に言えることであり、それほど珍しい仕様ではありません。
とはいえ官公庁のシステム開発で働くSIerのエンジニアは、古いプログラムを読んで理解するスキルや、そのようなプログラムを書き換えるスキルなどが求められます。
顧客や口座情報管理システム
金融機関など、顧客の個人情報や口座情報を扱う情報システムはその管理が非常に厳格です。
そのため、プログラムを書くための多くの規約があるので、それを理解し規約に従ってプログラムを書けるスキルが求められます。
また、働く環境のセキュリティーも厳しく、顧客の個人情報や口座情報などのデータを安全に管理するスキルも重要です。
POSシステム
POSシステムのPOSとは、「Point of Sales」の略で、販売情報を即時に管理するシステムを意味する言葉です。
例えば、スーパーやコンビニなどで、バーコードを読み取るレジを見たことがあるでしょう。あれがPOSシステムの一部です。
なお、POSシステムは、スーパーやコンビニのレジのように、短い時間に多くのデータの入出力を扱います。
そのため、POSシステムには、サーバーの負荷が高くても、確実に処理できる安定性が求められます。
そしてこれを実現するには、プログラミングスキルに加えてデータベースに関する知識やスキルも必要です。
医療向けシステム
今の病院には、レントゲン装置やCTスキャナなどの検査結果を画像データにして診察し、カルテも診察室のパソコンから簡単に呼び出せる電子カルテが一般的です。
さらに、電子カルテと診察に使った検査機器の画像データや治験データなどを連携させて、前回の診察から経過を見て病状を判断する、といったことも可能になりました。
このような電子カルテも情報システムの一種です。
そして、このシステムでは、多くの画像データを扱うことから、このようなシステムを扱うSIerのエンジニアには、画像データを瞬時に呼び出したり、ドクターの希望通りに表示できるなど、画像を扱うためのスキルが求められます。
社内システム
会社にとって最も重要な書類が会計帳簿ですが、今では多くの企業が紙の帳簿の代わりに会計システムを使っています。
また、従業員の多い会社には、毎月の給料を計算するための人事管理システムが欠かせません。
さらに、日々の売上や在庫状況を記録する販売管理システムも、企業には必須の情報システムです。
そして、このような情報システムは、基幹システムとも呼ばれます。
このような企業に欠かせない基幹システムですが、多くの企業では、かなり以前に導入したシステムを保守しながら運用しています。
そのため、基幹システムを扱うSIerのエンジニアにも、古いプログラムを読んで理解するスキルや、そのようなプログラムを書き換えるスキルなどが求められます。
SIerの業務工程
SIerでは、巨大な情報システムの開発を大勢のプログラマーを動員し、納期までに確実に構築するため、かなり前からウォーターフォールモデルという開発手法を使っています。
なお、このウォーターフォールモデルとは、設計や開発といった各段階を順に終わらせて、次の工程に進んでいく方式です。
次から、SIerの業務で使われているウォーターフォールモデルに基づく業務工程について解説します。
要件定義
要件定義とは、情報システムを使って解決したい課題を明確にし、さらにユーザー部門から要望を聞くなどして情報システムで実現する機能を定義する工程です。
ウォーターフォールモデルでは最も上に位置しており、上流工程とも呼ばれます。
また要件定義は、構築する情報システムの仕様を決める重要な工程であり、元請けの大手SIerでもベテランのシステムエンジニアが担当します。
基本設計
要件定義に基づいて情報システムの基本的な仕様を設計する工程が基本設計です。
またこの工程では、システムの運用方針、サーバーの仕様やデータベースなどのミドルウェアの仕様、また外部システムとの連携方法などを、情報システムの基本的な仕様を設計します。
さらに基本設計には、システムを外から見たとき、どういった動きをするか定義も含まれています。
そして、その動きを実現するためのサブシステムの仕様を定義し、サブシステム毎に分割して、下流工程の詳細設計を担当する下請けのSIerに渡されます。
詳細設計
基本設計では、システムを外から見たときの動作を定義するのに対し、詳細設計ではシステム内部の動作を細かく定義します。
そして、詳細設計は、これだけでプログラムが作れるほど細かい処理まで詳しく書かれるのが一般的です。
このように詳細設計はプログラム作成に直結していることから、通常、システムの構築を担当する下請けのSierのシステムエンジニアが担当します。
開発
詳細設計に従い、プログラムの作成を担当する工程が開発です。
なお、一般的な業務システムのプログラムは巨大になるため、多くのプログラマーが参加します。
そして、詳細設計を担当したSIerのプログラマーだけでは足りずに、何社ものSIerに発注し、多くのプログラマーを集めるのが一般的です。
中には、受注したSIerのプログラマーでは人数が足りず、別の業者からプログラマーを調達することも頻繁に行われ、開発のほとんどは多重請負になってしまいます。
テスト
SIerは、顧客から情報システムの開発を請負契約で受注するため製造者責任が発生し、納品後に不具合があった場合は、SIerの負担で修復しなければなりません。
そのため、納品前に不具合が無いかのチェックが重要です。
そして、これを担当するのがテスト工程です。
テスト工程はその多くで経験の浅いITエンジニアが担当し、開発したシステムが仕様書どおりに動作するかをチェックします。
また、最近はテストの自動化が導入されるケースもあり、開発と並行してテスト用の仕組みを準備することで、テスト工程の簡略化が図られたりしています。
SIerの将来性はぶっちゃけどうなの?
日本で使われている企業の情報システムを取り巻く環境は、近年大きく変化しています。
例えば、以前なら多くの企業が本社にデータセンターを設置し、そこで稼働している情報システムを全社で利用するのが一般的でした。
しかし今は、クラウド上に便利なサービスが幾つもあり、多くのビジネスマンがそういったサービスを業務で活用しています。
しかし、SIerが得意としてきた既存の情報システムは、クラウドとの連携ができず、そのような古い情報システムが業務遂行の妨げとなりつつあるのが現状です。
また、かなり前から、SIerのブラックな職場が指摘されてきました。
そのため、今後のSIerの将来性に不安を抱えている方もいるでしょう。
次から、SIerの将来性について解説します。
システム開発の需要がなくなることはない
まず企業などで使われている情報システムが、今後なくなることはありません。
むしろ、スマートフォンやタブレットなど、便利な機器が増えているのことから、それらとも連携できる新しい情報システムに置き換わっていくと予想されます。
さらに企業が本気になって業務にITを活用しようとすれば、むしろ情報システムを新しくするSierの仕事は、今よりも増加すると考えられています。
クラウドなど最新の技術に対応できるかがポイント
今は、1人が1台のスマホを持ち、日本中どこにいてもそのスマホでインターネットに接続できる時代です。
そして、そういったスマホから利用できるクラウド上のサービスが数多く公開されており、多くのビジネスマンが利用しています。
さらにクラウド上に自社の情報システムの一部を移し、クラウドのサービスだけで業務が完結できる仕組みを作り、実績を上げている先進的な企業も登場しました。
しかし、既存の情報システムしか持たない会社では、今のクラウドの時代の仕事のスピードについていけません。
そのため、今後クラウドを活用した会社と競合していくには、ビジネスを支える情報システムがクラウドなど最新の技術に対応する必要があります。
老朽化したシステムを最新の技術に移行できるかポイント
経産省のDXレポートでは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムがそのまま残った場合、企業のみならず国全体の経済の停滞などを指す言葉として「2025年の崖」が提唱されました。
このように、老朽化した情報システムは、企業にとってリスクになりつつあります。
そのため今後、クラウドの最新技術に対応した情報システムにどうやって移行するか、また、それを支えるSIerのスキルアップが重要になってきます。
SIerで働くエンジニアなら、今扱っている情報システムに関するスキルだけではなく、クラウドに対応できる新しいスキルを学び、老朽化した情報システムの更新に対応できなければなりません。
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
まとめ
SIerは、ネットではブラックな職場など、良くない噂もありますが、企業の情報システムの開発・保守・運用を担当する欠かせない存在です。
しかし、その仕事の内容や分類など、詳しい事を知らなかった方が多いかもしれません。
これまで解説したように、一口にSIerと言っても、元請けとなる大手SIer、保守や運用が仕事の中院となるSIer、下請けのSIerとではその役割や仕事の内容が違います。
SIerについてもっと詳しく知りたい方は、その分類や仕事内容にも関心を持って調べてみましょう。
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